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​島音楽/琉球シャンソン、
それは本当の沖縄へのラブレター

現在の楽園的なイメージとは違って、かつての沖縄は生き地獄と呼ばれるほど悲惨な歴史の島でした。それにも関わらず、島人たちは多くの美しい歌や踊りを残してきました。生活は恐怖と悲しみで塗り潰されていましたが、そこにはまた生きるための究極の愛と癒やしがありました。しかしそれはいま、私たちの無知と無関心の中で失われようとしています。何の力も後ろ盾もない私ですが、歌うこと弾くことくらいはできます。亜熱帯の小さな島で紡がれた、日本や西欧のものとも異なる愛の形を、音楽の力を借りて伝えます。

​でいごの花の満開の向こう

この歌は、戦争によって引き裂かれた恋人たちの物語です。

デイゴの木の下で再会を約束していた恋人達。しかし、

の日、愛する彼はあらわれませんでした。それでもなお待ち続ける娘。必ず帰ってくると言った彼の言葉を信じて。
二度と繰り返してはならない悲惨な戦争。

愛する人を失う悲しみは、どの国の人だって同じなはずです。
でいご、沖縄から平和への祈りをお届けします。

でいご

 


赤いデイゴの花が咲く頃
あなたに会いに行きましょう
戦争が終わって二人で約束した日が
もうすぐやってくるから

 

デイゴの花のような
色鮮やかな口紅を塗りました
大人になったねとからかわれ
耳まで赤く染めました


約束の日デイゴの花の下に
あなたはいませんでした
そのかわり一通の手紙を
使いの方が持ってきました

 

その手紙はあなたが
戦争で亡くなったという知らせ
今日の日と私を気にしながら
悔しげに息を引き取ったそうです


私は長いこと泣き続けました
風に散るデイゴの花びらは
まるで私が悲しみに流した
赤い涙のようでした

デイゴの花の季節になると
デイゴの花嵐の向こうから
あなたがやってくる気がして
心がときめくのです

月日は流れデイゴも切られ
でも私は信じているのです
きっとまたあの約束の場所で
昔の二人になって巡り会えると

藍染めの歌

藍染めの布、それは「アイ・ヌノ」と書いて、ランプと読みます。とても素敵な言葉です。藍染めは、布を何度も染め直し、色を深めていきます。まるで、人と人との信頼や愛情のように、時間と手間をかけて、少しづつ、ゆっくりと…。
沖縄ではむかし、恋の始まりには浅い色の藍染め着物を着たそうです。そして、恋が深まると、深い紺色の着物を着たといいます。思いの深さによって色合いを変える、昔の人はとてもロマンチックだったんですね。

 藍染めの歌



藍染めの布 ふわり
真南(まはえ)の風に 舞い
太陽(てぃだ)の光ふくんだ ルリの色
君のやさしい まなざしに似て
心あつく ときめく

浅地の色が なれそめの恋なら
紺地の色は 永久(とわ)への誓い
恋にとまどう私は 昔の歌にならい
かりそめ二色(ふたいろ)に染めました


藍染めの布 きらり
青を流した空に映え
染め上がりの 鮮やかな紺青の色
愛しいあなたの 面影を映して
心思わず ざわめく

ひとたび染まれば 終(つい)に消えぬ藍なら
あなたの心も 私色(わたしいろ)に染めて
洗うほどに 輝く藍布(らんぷ)のように
時たつ愛も 深まればいいね


藍染めの布 さらり
素洗いの肌に 触れ
手染めの藍の衣に 乱れ髪
いつまでも 美しいままでと言った
恋しいあなたの 声がする

浸すほどに色増す 藍の「すくも」のように
恋しい思いは 日ごとつのるばかり
今日も私は マージ(赤土)の壺に藍をたて
染めに 思い託しあなたを待つ

 

一日前のメリークリスマス

私が通っていた中学は、飲み屋街のハズレにありました。私の家はちょうど飲み屋街の反対側にあったので、登下校はまさに飲み屋街のどまんなかを通ることになります。
三年間みっちり通りました。夕暮れになると、どこからか湧いてくるように現れる黒服のキャッチのお兄さんたち。きらびやかなドレスを身にまとったキャバ嬢のおねえさんたち。そして飲んだくれて道端に転がっているホームレスの老人。みんな日常生活の中の当たり前の風景でした。そんなある日、ふとある光景を目にしました。
それは、私にとって一生忘れることのできない印象的な光景でした。その光景からヒントを得て作ったのが、これからお届けする「一日前のメリークリスマス」です。キャバクラ嬢とホームレスのラブストーリーを歌いました。
それではお聴きください。「一日前のメリークリスマス」

一日前のメリークリスマス。


あれはクリスマスイヴの前の晩
俺は夜の公園で一人
安酒をしたたか飲んで

良い機嫌で 夜の街へ繰り出したんだ

だけど文無しの俺など
誰も見向きもしない
通りにたむろする キャッチでさえも
みんな無視しやがるんだ

オーオー、メリークリスマス
一日前だけど  メリークリスマス
世界で一番早い  メりークリスマス
俺ひとりぼっちのメリークリスマス


俺は酒瓶を掲げて叫んだ メリークリスマス
おっさんイブは明日だよ
くたばっちまいなと キャッチが笑う

そこで俺は酒瓶で

そいつの頭を 軽く撫でてやったのさ
ところが何発も殴り返され
気がついたらゴミ捨て場に転がってたんだ

オーオー、メリークリスマス
ひとりで祝おう  メリークリスマス
明日はあるかわからないから
生きていればこそメリークリスマス


ピンクのドレスを着た娘が
俺をのぞきこんでいたんだ
ひどいことするのねと
きれいな涙を 俺にこぼしやがる

だから俺は言ってやったのさ
お嬢さん生ゴミなんかに かまうんじゃないよ
あんたのそのやさしさは
いつか生命とりになるよ

オーオー、メリークリスマス
あの子に幸あれ  メリークリスマス
明日はあるかわからないけど
かわいいプレゼントありがとう

オーオー、メリークリスマス
一日前だけど   メリークリスマス
世界で一番早い   メりークリスマス
俺とあの子だけのメリークリスマス

 

​オジーよオバーよ

沖縄はつい三十年くらい前までは、ろくに食べるものもない、着るものもない、それどころか十分な飲水、満足な住居さえないといった悲惨な暮らしを送っていました。絶海の孤島に位置する沖縄の生活は離島苦(しまちゃび)と固有名詞で呼ばれるほどでした。
それがいまは空前の沖縄ブームで以前の沖縄からは考えられない繁栄を遂げています。あの何もなかった極貧の時代、戦争の荒波をうけてさらに追いつめられたとき、人々は生きるか死ぬかの瀬戸際でいったいどうやって生き抜いてきたのでしょうか。
それは歌、踊りでした。たとえ食べるものがなくても、たとえどんなに傷ついていても、声さえあれば歌うことは出来る。手さえあれば踊ることはできる。そうやって沖縄のオジー、オバーたちは歌うことによって、踊ることによって過酷な人生と向き合い、子どもたちを守ってきたのです。
今はいないオジー、オバー(祖先たち、という意味です)。あなたたちが今はすっかり豊かになって、驚くほど変わり果ててしまった沖縄を見たらどう思うでしょうか。(喜んでくれるでしょうか?それとも……。)そして私達は沖縄をこれからどうかえていくのでしょうか?オジーよ、オバーよ、どうか私たちを正しい道へと導いてください。

オジーよ、オバーよ 


オバーは教えてくれた
これからいろんな
苦しみや悲しみが
お前に訪れるだろう
お前は裏切られ
深く傷つくかもしれない

そういうときはいつも
すべてを忘れて
ひたすら踊りなさい
そうやってオバーたちも
いろんな憎しみや悲しみを
乗り越えてきたから

踊りながら
悲惨な人生を生き抜いた
祖先たちのことを思いなさい
踊りながら
苦しみの中で子供たちを諦めなかった
親たちのことを思いなさい
命の重さが見えてくるから

オバーよ
あなたこそ私の守り神
くじけそうになったとき
いつもあなたのことを思う

オジーは教えてくれた
これからいろんな
試練や苦難が
お前を打ちのめすだろう
お前の心は砕け散り
逃げたいと思うかもしれない

そういうときはいつも
心を声に託して歌いなさい
そうやってオジーたちも
わずかな希望の火を
つないで来たから

歌いながら
戦さ世を生き抜いた
祖先たちのことを思いなさい
歌いながら
どんなときでもお前を守り通した
親たちのことを思いなさい
生きる力が溢れてくるから

オジーよ
あなたこそ私の守り神
倒れそうになったとき
いつもあなたの事を思う

魂が病んだときは
海の彼方を見つめる
あなたは波や風となって
私を見守っている


私はオジーを感じる
ありがとうオジーよ
私もいつか歌になり
あなたの愛を伝えます

ありがとうオジーよ、オバーよ
私もいつか風になり
あなたに会いに行きます

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​琉球シャンソン」曲リスト

心やふぁやふぁと

藍染めの歌 ※

踊らば踊れ

ゴーボワヤージ

街角の奇跡 ※

ダンル・ブルー ※

オーモンペール ※

南の島のラブストーリー

でいご ※

波之上まーい

月のアフオリ

亜熱帯少女

※印はフランス語バージョン

 もあります。

オジーよオバーよ

橋の上の魔物

うむまあぎー ※

君が森へ行くとき

一日前のメリークリスマス ※

猫街ストーリー ※

あるがままに咲く花

不機嫌な金魚 ※

やさしい鳥

人は夢にひらく

夢の降る街角 ※

二人

少年の最後の夢

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